SEP体験談 - トヨタ自動車株式会社 本多 清二さん(CSEP)

トヨタ自動車株式会社

本多 清二さん(CSEP)

 

Q1. SEをどのように勉強してきましたか?

 SEを学び始めた当時はまずはSEハンドブックやオンライン文献からSEの全体像を把握しようと試みましたが、私のバックグラウンドがハードウェアの物理設計だったため、多くの概念が新しく、理解するのに苦労しました。そこで、SEハンドブックで理解できなかった箇所はオンライン情報(特にINCOSEやNASAや要求工学に関する資料等)で補いつつ理解を深めました。現在も勉強を続けていますが、最近は詳しく知りたい場合に生成AIも活用しています。非常に分かり易い説明文を得ることができ、理解が進んでいることを実感しています。 

 ただ調べるだけでなく、実プロジェクトへのSE適用のトライも有益でした。なぜなら、関係者にどのようにSEを実践するか具体的に説明する必要が出てくるためです。さらに私の場合、参考書籍や文献に具体的な実践方法(How)の記載が無かったため、自分で実践方法のアイデアを考え、それによってSEの理解を深めていったことや、実プロジェクトで関係者と共にSEプロセスの実践方法を議論や試行錯誤する中で実効的なSEとは何かが見えてきたように思います。今思えばそれが文献を読むよりも大きな学びになったことを実感しています。

 最後に、忙しい日々の中でもSEの勉強を続ける策として、SEの理解度を客観的に判断できるINCOSEのASEP合格を目指すことをモチベーションの1つとして活用したこともお伝えしておきます。また、こちらも生成AI活用でASEP模擬試験を作成し理解度チェックを図ることもおススメします。

Q2. SEを学んでどんなメリットを実感しましたか?

 過去に研究から量産まで一貫して携わったハードウェア設計の実務経験を通じて、仕様見直しや再評価テストの繰り返しに課題感を抱き始めた時にSEの存在を知りましたが、SEの特に要求定義、アーキテクチャ定義、そしてV&Vの考え方が当時の私が気づいていなかった設計思想を見事に説明されていました。このような気づきだけでも大いにメリットがあったと感じています。私だけでなく開発担当者にも上記3つの考え方を取り入れたSEの説明をすると共感を示される方が多いです。

 また、個人的な成長としては、従来のハードウェア設計で良かれと思って対象とするシステムをいきなり物理式や部品特性から考えていたのに対して、その背後にある機能や要件から考えることで、システムの1つ、2つ上の階層にも踏み込んだ検討が出来るようになりました。その結果、自分の担当部品の枠を超えてシステム設計をすることができるようになりました。その端的な実例に、1つの部品やシステムの担当ではなく、SE担当者として宇宙探査車両を含む全体システムの運用検討という大きな枠組みの中でシステム設計することができたのですが、この経験はSEだからこそ出来たことかと思います。

 さらに、ライフサイクル定義や利害関係者、テーラリングという用語も今となっては当たり前のように使いますが、これら用語やキーポイントを知るキッカケとなりました。特に「利害関係者」はSEを学んで知りましたが、重要な用語で、今では要求定義やValidation計画を考える上では欠かせず、開発検討の視野を広げることにつながっています。